【原発・6】 震災後、住民の避難所だった女川原発
福島第一とて安全に停止した(引用) 牡鹿半島の女川町の被害は甚大でした。人口1万14名中、569名が死亡。住宅被害総数4,411中、全壊66.3%、大規模半壊と半壊合わせて7.9%です。
牡鹿半島内の道路は寸断し、
発電所周辺の集落は陸の孤島状態となりました。雪も降る寒い日でした。夕方になり、集落の人びとが山道を歩き、自主的に発電所に向かったのです。町民たちは、大震災のとき、女川原発が最も安全だと信じていたようでした。海水に浸かり、下半身ずぶぬれになっている人もいました。
(略) 避難者は最大364名(3月14日時点)にのぼり、なかには臨月を迎えている妊婦さん、酸素ボンベが必要な人もいました。社員用に用意していた備蓄の食糧は不足し、しばらくの間、
避難住民は1日2食、発電所員は1日1食でしのぐという状況でした。
(高田純著、「決定版・福島の放射線衛生調査」、p43-44より)***
メディアも反原発の皆様も、こういう「事実」はスルーなさいます。
さて、改めて説明する必要もないと思いますが、
福島第一とて、
揺れを感知して原子炉は安全に停止したんです。
無事だった福島第二(東京電力)や、女川原発(東北電力)のように。
これにより、日本の原発の
耐震性能が、世界から絶賛されました。
元々、軽水炉はアメリカで開発されたものですが、導入した際、
日本の技術者達は、大地震に備えて、様々な改良を施したのです。
ただ今回、予想を超える規模の津波にやられました。
震災当時、太平洋岸の各地で、堤防を越えて波が浸入、
人が、民家が、車が攫われ、壊滅的な被害を受けました。
福島第一もそうだった、と云う事です。
非常用の外部電源とポンプを喪失、冷却機能が失われました。
炉自体は安全停止、つまり核反応は停止した後で安全だったのですが、
それ以上、温度を下げられなくなってしまったんです。
(引用) 翌12日午前3時、東京電力は、1号機の格納容器の破裂を避けるために炉心から大気中への排気を行い、原子炉格納容器の
内部圧力を下げるベント作業の実施を、政府へ要望しました。
しかし、なぜか、
官邸は東京電力に、枝野官房長官らが、国民に広報するまで待たせたのでした。菅総理自身が、ベント実施に平行して事故現場の福島第一原発を視察することを決定し、同日7時11分、現場に到着しました。そして、自身が、直接ベントを指示したのでした。
一国の総理が、原子力緊急事態に、現場の発電所に乗り込む異常な状況を、当の総理大臣の考えで行われたのです。
現場は混乱しましたが、同日14時30分にようやく、ベント作業が実施されました。
12日15時36分に1号機で、
火災を伴わない爆発が起きました。原子炉内の水が分解して発生した水素ガスが、圧力容器を収納する格納容器から原子炉建屋に漏れ出し、
建屋の壁を吹き飛ばす水素爆発でした。化学反応による爆発で、核融合を伴う爆発(水爆)ではありません。(高田純著、「決定版・福島の放射線衛生調査」、p46-47より)***
メディアや有識者(?)が、「爆発、爆発」と連発するので、
核爆発が起きたと勘違いした視聴者がいたようですが、
水素爆発です。
簡単に言ってしまうと、
水蒸気爆発の上位種ですよ。
水が100℃で沸騰すれば水蒸気になる、これくらいはご存知でしょう。
体積も膨らんで、外へ出ようとします。ヤカンの蓋が持ち上がるのがそう。
でも、それ以上の温度で、外へも出られない状態が続くと、
化学反応が起こり、
水素ガスが発生してしまうんです。
冷却機能が失われ、温度を下げられないのですから、
水素ガスはどんどんどんどん発生、体積が脹らみ過ぎて、
ついには、原子炉建屋を吹き飛ばしてしまった、と。
夜通しの作業をしている技術者達が、「危険だ」と判断したからこそ、
深夜3時、大気中に逃がし圧力を下げる作業(ベント)を申し入れたんですよね?
総理大臣に、現場指揮を要請したのではありません。
(引用) 福島第一原発内の2012年4月までの作業者2万1,776人の線量のなかで、最も高い実効線量は東電社員の679mSv、線量の中央値は約5mSvでした。これは内外被爆の総和です。
最も高い線量となった250mSvを超える線量は6件で、全員が東電社員です。協力企業の作業員の最大値は238mSvで、200mSvを超えたのは2人です。高線量の主な原因はヨウ素131の甲状腺の内部被爆でした。
外部被爆線量の積算値で100mSvを超えたのは75人で、100~150mSvが65人、150~200mSvが10人です。それ以上の線量は一人もいません。
100mSvを超えた75人のうち、東電社員が64人で、彼らの責任感の高さが、この数値に表れています。立派です。(高田純著、「決定版・福島の放射線衛生調査」、p151-152より)東電社員と、協力企業の作業員は、
菅直人に被害請求をする権利があると思います。
2017/11/06 不破 慈(ふわめぐみ)

水素爆発によって、建屋の壁は吹き飛びましたが、
鉄筋コンクリート製の格納容器は、保ち堪えてくれました。
この格納容器も、耐震性の一つとして、
日本の技術者が改良したものです。
鋼鉄製の圧力容器の底は抜けたものの、
底部の厚さ2mの格納容器がそれを受け止め、
60cmを溶かしただけで、見事、役目を果たしてくれました。
故に、メルトダウンではなく、
メルトスルー。
チェルノブイリでは、炉が原形を留めませんでした。
その格納容器の内部に、
ウラン、プルトニウム、ストロンチウムと云った、
金属性の核種の殆どが、閉じ込められています。
ただ、揮発性の核種はどうしても防ぎ切れず、
一部が水素ガスと共に、外へ漏れ出てしまいました。
放射性ヨウ素やセシウムがそれです。
ヨウ素については、 既に
【原発4】で説明した通り。
セシウムの話は、次回に譲ります。
高田純医師のサイト ⇒
放射線防護情報センター ( http://rpic.jp/ )
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