ミトコンドリアDNAに、
レイプの痕跡など刻まれない「アイヌは北方から流入し、和人女性を強姦した」と唱える方々がいます。
あるいは、「オホーツク文化人を駆逐して、日本列島に南下」、とかね。
保守系(と目される)活動家が、ですよ?
まぁ、アイヌを使って「日本を分断したい人達」にとっては、
我々の父祖が「完全な異民族」である方が望ましいと思いますけれど。
そして彼等は、「強姦魔」という主張の正当性として、
「
ミトコンドリアDNAハプログループによる研究」を挙げます。
日本において、ミトコンドリアDNAハプログループ研究の
第一人者と言えば、国立科学博物館の篠田謙一先生(医学博士)なんですが。
篠田謙一先生の著書の何処にも、
「和人女性を強姦」なんて書かれていないし、
「オホーツク文化人を駆逐」とも、書かれていない。書かれていないものを「書かれていない」と証明するには、どうしたら良いか?
まさか、著書の全頁をスキャンしてアップするわけにも行きません。
拙宅では折々に触れて、分子人類学について解説していますが、
今回、改めてこんな説明を考えてみました(^^)
※篠田謙一著、DNAで語る日本人起源論、p173より (岩波全書、2015.09)画像は、
江戸期のアイヌ人骨を調査したものです。
特徴的なミトコンドリアDNAハプログループのタイプは、「Y」です。
北東シベリア地域に限局して見られるハプログループであることと、
現時点では、縄文期の遺跡(人骨)から発見されないことから、
日本列島には、後の時代に流入したと考えられています。
アイヌ集団に「Y」をもたらしたのは、オホーツク文化人と見られます。
3~13世紀まで栄え、一時期は道内(北岸部)まで南下して来ました。
そしてそれを以って、彼等は以下のように主張します。
「
アイヌが保有するYは、オホーツク文化人を駆逐し、女性を強姦した証拠!」
この「Y」は、日本の全人口の中、0.4%の頻度で出現し、
1億2千万を分母にすると、大凡で48万人が保有する計算になります。
我々アイヌ系日本人の数は現在、正確には把握されていませんが、
2万人程度と云ったところでしょうか? 3万は超えないでしょうね。
どう見積もっても、日本列島におけるYの保有は、和人が大半を占めます。
彼等の主張する論理を、和人側に当て嵌めれば、こうなりますね?
「
和人が保有するYは、オホーツク文化人を駆逐し、女性を強姦した証拠!」
……皆さん、いつの間にやらかしたんですか? (゜。゜;
次にアイヌ集団で目立つのが、「N9b」です。
日本全体では2.1%、ざっと252万人が保有する計算になります。
縄文期から列島に存在し、「日本固有のハプログループの一つ」と呼ばれます。
そしてそれを以って、彼等は以下のように主張します。
「
アイヌが後の時代にやって来て、和人女性を強姦した証拠!」
……残念ながら、「日本に固有」の意味を、勘違いしています。
「N9b」は、沿海州の先住集団
(少数民)にも、高頻度で出現するんです。ただ、土台の頭数が、日本とは違い過ぎますからね。
各々が数千人規模ですし、中には1000人に満たない部族とてあります。
よって、「
日本に固有(と考えて差し支えない)」と解釈されるだけで。
そもそもの段階で、「日本に固有(と考えて差し支えない)N9b」と、
「北東シベリアに限局(と考えて差し支えない)Y」は、
同じN9から分岐した兄弟同士なんです。
系統的な位置付けがはっきりしないうちに、「Y」と云う
大きなナンバーが振られてしまい、パッと見には判り難いだけで。
Y …… 約2万年前にN9から分岐、日本人の0.4%が保有
N9b …… 約1万5千年前に分岐、日本人の2.1%が保有
N9a …… 約1万5千年前に分岐、日本人の4.6%が保有
←オマケ情報***
北海道にアイヌ文化が登場するのと前後して、
確かに、樺太ではオホーツク文化が衰退しました。
ただ、13世紀のメインイベントとして、
元寇があるんですよ。
日本への侵攻と前後して、元軍は断続的に、樺太へも攻め入っています。
※北の元寇……フツーに考えて、オホーツク文化が滅んだ理由はそれですよね?
2018/10/29 不破 慈(ふわめぐみ)
※アップ同日、加筆修正

何故、二言目には「駆逐だ、強姦だ」と出て来るのか、私には解りません。
理科学書をどれほど読み解いても、そんな文言は出て来ないからです。
ただ、DNA関連の書籍を参考に書かれた(らしい)保守系の著書には、
「オホーツク文化人を駆逐」、「和人女性を強姦した可能性」と記されています。
……我々アイヌ系日本人を、駆逐したいと云う願望か何かですか?
私は兼ねてより、アイヌ系の日本人が声を上げることが重要だと考えて来ました。
協会や道新は、「騒いでいるのは砂澤陣ただ一人」と云う演出をしたいでしょうから。
しかし今、考え直しています。 味方である筈の日本人から、
背中を撃たれると云うこの状況。 ヘタな呼び掛けなど出来ません。
「事実」なら、甘んじて受け入れましょう。しかし、「科学的には」、駆逐の事実も、
強姦の事実も、浮かび上がって来ないのです。
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コメントすることに慣れていないので、不備があったらすみません。
今回の記事の加筆部のふわふわさんの思いを見て、私が思ったことを書かせてください。
「味方であるはずの日本人から攻撃されている」という演出をしたいのでは?と思いました。
信頼できる者がいない、孤立無援である、いつ足元を掬われるかわからないという疑心暗鬼の状態にし、発言することに対して警戒心を持たせる。
そして「ヘタな呼び掛けなど出来ません」という態度を引き出す。
本当の事を知られたくないんでしょう。
アイヌについての認識に対して情報発信しているあなたのような方々の考えが浸透してきているのかもしれません。
それによって北海道・アイヌ利権で甘い汁を吸う人々が息苦しくなってきた。
そこで新しい作戦を打ち出し、「アイヌは被害者ではなく加害者であるとし、それを日本人として言わせる」という活動をはじめた、というとらえ方ができると私は思います。
日本人もしくは日本人のふりができる人を、金か何かで操るか、しっかりとした洗脳教育を施して発言させるくらいやりそうです。
こういう人たちは、そこにある問題を永遠に解決させないことが目的なのでしょうね。
問題で利益を得られる人たちですから。
不当な扱いをされた人々が在り、その問題を解決するために必要な援助をするべきであるという理論を使って利益を吸い上げるという弱者ビジネスに使えますし、
憎しみ、罪悪感、めんどくささといったネガティブな感情による分断工作にも使えます。
大きな問題を起こして、注視されたくない事から目をそらさせるという利用法もありますね。
言いたいことが纏まっていない文ですみません。
とにかく私には、アイヌを悪者にしようとする日本人という像は問題を作ろうとする人たちの演技に見えるんです。
自分たちの利益を生み出すネタを守ろうと足掻いているように見えるんです。
私は内地に住む日本人ですが、アイヌに対しての認識は「日本人に迫害された原住民」でした。
ですがふわふわさんのこのブログや他の方の本やネットにある情報を見て、実態はこんな単純な状態ではないと知りました。
知ったのは私だけではないでしょう。
問題を作りたい人たちにとって恐いのは、こうして本当の事を周知されることだと思います。
その情報発信をアイヌ系の方本人がなさってくれていることが本当に頼もしいです。
本当にありがとうございます。
無理のない範囲で続けていっていただけたら嬉しいです。