二番目の山羊

北海道出身の父はアイヌクォーター、福島出身の母は「蝦夷のアベ」

SS:堕天使(2)【R15G】

「堕胎」がテーマです。
心的外傷のある方は避けて下さい。

※性的描写はありませんが、一応、年齢の低い方にはお勧めしません。



「術後の経過も良いようです。もう大丈夫でしょう」
「本当にありがとうございます。先生のお陰です」
初老の女性が、何度も頭を下げていた。
ベッドに横たわっている夫の代わりに。

「凄く確立の低い手術だったんだ、って聞いたぜ?」
「まだお若いのに、腕の良い先生だねぇ……」
相部屋の患者が、その様子を見て囁いた。

「院長先生の跡取りだもんねぇ……」

「じゃ、私はこれで。お大事になさって下さい」
医師は看護士を連れて、病室を後にした。


ナースステーションでも、良く話題に上った。
「何とか取り入ろうかな~?」
「あら、ダメよ! 院長先生の目が光ってるわよ?!」
「でも、結婚前までは、結構、派手に遊んでたらしいわよ~?」
「捨てた女も、二桁とか……!」
何処の職場も、噂好きは多い。



「お~い」
「あ、院長!」
廊下で件の医師が呼び止められた。

「すまないねぇ。今日は、“愛”の三歳の誕生日だと言うのに。
 市議の先生の都合上、急遽。家内も同伴なんだ。
 行けなくなって申し訳ない、と、娘に謝っておいてくれ」
「仕方無いです、病院の将来に関わって来る事ですし。
 地域の医療問題だって」

「“先生”が残念そうにしていたよ。
 “今回、若先生にはお会い出来ませんか……”と。まぁ、急なお誘いだし。
 可愛い孫娘が三歳なんです、せめて両親は、と、ご勘弁頂いたよ」

院長と談笑しながら、ロビーに差し掛かった。
瞬間、硬直した。

待合室の人混みに、“棄てた女”が立っていた。
「?!」

まさか! と思い、ぎゅっと目を瞑って首を横に振る。
再び、目を開けると、もう女は居なかった。
いつもの風景。順番待ちの患者、名前を呼ぶ看護士の声。

「どうした? 顔が青いぞ?」
院長が怪訝な表情で覗き込んだ。

「あ、い、いえ、……疲れてる……みたいです……」
眉間を押さえながら答えた。

「そうか、君には頑張って貰ってるからな。
今夜は親子三人、水入らずでゆっくりしてくれ」


――五年も前の話だぞ? 今頃、幻を見るなんて――

しっかりしろ、医者なら、科学者なら。
そう自分に言い聞かせた。



夜の8時。それでも今日は早く上がらせて貰った。
住宅街は、街灯も少なく、駅周辺よりは暗い。
邸の前まで来ると、突然、車のライトに、幼子が浮かび上がった。

「?!」
慌ててブレーキを踏む。
そこには、小さな女の子。

不審に思い、車を降りた。
「どうしたの? こんな時間に一人で。お母さんは?」

近付いてみて、目を見開いた。
女の子の全身に、黒く変色した血痕が付着していた。

「怪我をしているのか?! ウチに来なさい! 手当てをしてあげよう!」
車庫入れは後回し。チャイムで妻を呼び出した。

「どうしたの? 貴方。そんなに慌てて」
「怪我をした子が! ……あれ?」

居ない。
が。そこには血溜り。

「確かにここに! ほら、こんなに血が!」
「血? ……何処に?」
「あれ……?」

血溜りも消えていた。

「疲れてるんじゃない? 大丈夫? 辛いなら先に休む?」
「……いや……。愛の顔を見れば吹き飛ぶだろう」
「悪いわね。今日はパパとケーキ食べる、って。朝から大変だったのよ?」
妻は微笑んだ。



「愛ちゃん、三歳のお誕生日、おめでとう~!」
主役は頬を膨らませて、ロウソクを一気に吹き消した。
三人でケーキを囲み、両親は手を叩いて自分を祝福してくれている。
いつもは忙しいパパも、今日は一緒に居てくれる。

「じゃ、灯り点けるわね~」
母親が、照明に向けて、リモコンを操作した。

「?! 何処から?!」
部屋が明るくなると、父親は仰天した。

娘の背後に、塗れの女の子。



血がお前を追って来る。





2013/11/27  不破 慈

終わってから手入れします。

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[ 2013/11/27 13:59 ] 二次 -3.ShortStory[ORIGINAL] | TB(0) | CM(0)
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